セミナーレポート

国際セミナー2011 犬と猫の変形性関節症における診断と臨床的アプローチ

2011年10月28日(金)/10月30日(日)

Dr. Brian S.Beale/Gulf Coast Veterinary Specialists/外科専門医 フロリダ大学 学外講師

2011年10月、米国からDr. Brian S. Beale(Gulf Coast Veterinary Specialists外科専門医、フロリダ大学学外講師)を講師に迎えて、犬と猫の変形性関節症(OA)についてのセミナーを開催しました。米国の最新事例が知れる貴重な機会とあって、多くの先生方にお集まりいただきました。

変形性関節症による悪循環を断ち切るべく、
多様なアプローチを検討すること。
ビール博士講演中のビール博士。
犬にとって慢性的疼痛の一番の原因は関節炎。アメリカにおける1歳以上の犬の20%(約1,450万匹)が診断を受けているといいます。犬の変形性関節症(OA)のほとんどが続発疾患で、その95%は発症時にすでに関節に問題を抱えているケースが大半とのこと。関節の形成不全などを起こすと、炎症による痛みから犬は運動を嫌がります。それが筋萎縮や体重増加につながり、さらなる悪循環を招いてしまうことをビール博士は指摘しています。

OAは早期に治療を開始すれば正常に近い状態に戻せますが、慢性化し、軟骨の組織自体がダメージを受けていると元には戻せません。したがって治療に際しては、疼痛管理や食事制限、運動による肥満防止などに加え、軟骨保護作用成分を含んだ栄養補助食品の併用が有用です。特にコンドロイチンとグルコサミンの組み合わせには相乗効果が認められることから、ビール博士もそれらが高純度に含まれた軟骨保護剤の使用を推奨しています。
多くが罹患しながらも、発見が困難な猫のOA。
早期治療に向けてサインを見逃さないように。
質疑応答講演終了後の質疑応答では、活発な質問が交わされました。
続いてビール博士は、アメリカでの調査結果をもとに、猫にもOAが多いことを紹介。猫のOAにおいては犬のような跛行が一般的に見られないうえ、わずかな行動変化は老化のプロセスだと認識されがちです。したがって猫のOAの発見には、「1.ジャンプをしたがらない」「2.ジャンプの高さが低くなった」「3.ロボット様跛行」、という3つの兆候が非常に重要であるといいます。また、飼い主に対しては家での行動をよくヒアリングすること。さらには院内での能力検査なども重要である、とビール博士は述べています。

治療は犬と同様、減量や療法食への変更、栄養補助食品の使用、運動・リハビリテーションなどを組み合わせて行うべきですが、猫についても、OAの初期にはコンドロイチンとグルコサミンを組み合わせた軟骨保護剤が最適だといいます。跛行がひどくなった場合にはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)という手段もありますが、猫に対しては腎臓への影響が大きいことから、慎重に投与するべきとのこと。また、ビール博士は「(ステロイドの使用について)悪循環を断ち切り、臨床的な兆候を抑えるためにはステロイドの短期的な使用にもメリットがあり、その後に軟骨保護剤や他の疼痛管理の薬剤に移行していくのも良いだろう」と提示されました。

多くの臨床獣医師にご来場いただき、会場は満席。質疑応答も活発に交わされ、犬・猫の関節炎への先生方の関心の高さがひしひしと感じられました。本セミナーは2012年以降も引き続き開催する予定です。どうぞよろしくお願いいたします。