
犬・猫回虫症は、ペット(犬・猫)に寄生する回虫というおなかの虫によって引き起こされます。犬・猫では感染した母犬(猫)と子犬(猫)との間での母子感染や土壌からの感染、感染犬(猫)とのスキンシップ、感染犬(猫)の排泄物に触れるなどが原因で感染します。人では、感染犬(猫)が糞便と一緒に排せつした虫卵が、何らかの経緯で口から体内に入り、感染します。人の体内に侵入した回虫は、成虫になれずに体内を移行して内臓や眼などに入り、幼虫移行症と呼ばれるさまざまな障害を引き起こします。

犬回虫(Toxocara canis)・猫回虫(Toxocara cati)
回虫卵は、環境中での抵抗力が非常に強く、砂や土の中に混じって長期間生き続け、感染の機会を待っています。
感染していても症状が現れない「不顕性感染」がほとんどです。しかし、幼犬に多数の成虫が寄生した場合は、お腹の異常なふくれ、吐く息が甘い、異嗜(いし:食べ物ではないものを食べること)、元気がない、発育不良、やせる(削痩)、貧血、皮膚のたるみ(皮膚弛緩)、毛づやの悪化、食欲不振、便秘、下痢、腹痛、嘔吐を起こします。体内に幼虫が寄生しているメス犬が妊娠すると、胎盤や乳汁などを通して子犬にも感染します。
最近では犬・猫だけでなく野生化したアライグマのアライグマ回虫も注目されています。鳥類は主にニワトリが問題になります。
発熱や全身の倦怠感、食欲不振などがあります(幼虫が侵入する臓器によって症状が異なります)。肺では咳や喘鳴(ぜんめい)を、脳に達すればてんかん様発作の原因となると言われています。
東京医科歯科大学大学院 国際環境寄生虫病学分野 赤尾 信明先生提供主な症状としては網膜脈絡炎、ブドウ膜炎、網膜内腫瘤、硝子体混濁、網膜剥離による視力・視野障害、霧視(むし)、飛蚊(ひぶん)症などがあります。
自宅の庭で犬と鶏を飼育していた71歳と45歳の親子。ある日、鶏の肝臓を生で食べたところ、約2週間後、熱と咳、全身倦怠、頭痛、右腕のしびれなどの症状が2人に出たそうです。その後、人用の駆虫薬を投薬しましたが、2人とも薬の副作用による肝機能障害が強く出て治療を嫌がり、病院に来なくなってしまったとのこと。結局その1年後、父親が急性の腎不全を起こし、残念ながら亡くなってしまったそうです。
この症例では、親子が食べ残した鶏の肝臓が冷凍されていたため、それを解凍して調べたところ、小指の先ほどの小さな肝臓から300匹以上の犬回虫の幼虫が発見されました。つまり、親子2人で1,000匹以上の幼虫を口の中に入れたのでは?と推測され、犬回虫幼虫の大量寄生による、幼虫移行症であったことが分かっています。
感染犬(猫)の糞便に含まれる虫卵が口に入ることで感染します。また、感染した家畜(主にニワトリ)のレバーを生で食べることでも感染します。