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フィラリア症(犬糸状虫症)

フィラリア症(犬糸状虫症)は、蚊の媒介によって感染し、血液の慢性的循環障害や呼吸器の症状がみられます。犬の場合、薬による予防はほぼ100%可能ですが、予防薬の効果は犬の体内に侵入した感染幼虫が筋肉などで発育している間に駆除するものであり、感染そのものを防ぐものではありません。したがって成虫が寄生することで引き起こされる病害を予防するためには、定期的で確実な投薬が欠かせません。また、フィラリア症は発症例こそ少ないものの、人にも感染するリスクがあります(国内では約100例が確認されています)。また、犬糸状虫を媒介する蚊は、日本では4属16種類が知られています。

病原体

犬の末梢血液中のミクロフィラリア犬の末梢血液中のミクロフィラリア
犬糸状虫の成虫犬糸状虫(Dirofilaria immitis)の成虫

写真提供/サエキベテリナリィ・サイエンス 佐伯英治 先生

犬・猫へ感染した場合

症状

犬では、フィラリア(犬糸状虫)の成虫が肺動脈や心臓に寄生するため、血液循環障害を起こし、さまざまな症状が現れます。例えば散歩中にとても疲れやすくなり、階段を登るのを嫌がったり、興奮時や早朝に乾いた咳をするようになります。また、肝臓の肥大、腹水(お腹に水がたまること)、浮腫(ふしゅ:むくみのこと)、肺動脈塞栓(肺動脈の血管がつまること)、喀血(かっけつ:気道からの出血で血を吐くこと)、さらに多数の成虫が寄生している場合、それらが心臓につながる大きな血管を塞ぎ、血尿や貧血、呼吸困難などをともなう急性症状が現れ、急死する症例もあります。
猫では、感染しても寄生する数が少ないため、重い症状になるケースはまれです。しかし、数匹の寄生でも急性症状を引き起こし、突然死の一因となることがあります。また最近では、猫の血管で発育中の虫体による喘息様の呼吸器症状を起こす可能性が指摘されています。

治療法
  • 成虫に対しては、ヒ素剤を注意深く投与し、成虫を駆虫する。
  • 多数の犬糸状虫が寄生している場合や緊急を要する場合は、外科手術で成虫を取り出す。

※犬糸条虫症は治療よりも予防を優先する。

予防法
  • 蚊の活動期間および蚊がいなくなってから1カ月後までの期間、予防薬を確実に投与する。
  • 蚊の多い場所での飼育・散歩を避ける、あるいは忌避効果が期待される薬剤使用などの防蚊対策を行う。

人へ感染した場合

症状

無症状の場合が多いのですが、まれに咳や血痰(けったん)、胸痛、呼吸困難などが見られることもあります。

感染経路
[経皮感染]

蚊が犬糸状虫に感染している犬を吸血した際に、ミクロフィラリアも同時に吸引され蚊の体内に侵入して発育を開始します。蚊の体内で数週間かけて育った幼虫は感染力を持つようになり、その蚊が新たな犬を吸血するときに、針をつたって脱出してきた感染幼虫が針の刺し口から侵入します。

病原体を媒介する動物

動物と動物の間はもちろん、動物と人との間でも蚊が病原体を媒介します。

治療法
  • 患部を摘出する(診断が確定すれば必要ない)。
予防法
  • 犬の予防を徹底させることが、人の感染予防につながる。
  • 一般論として、蚊取り線香などの防蚊対策を行う。
(文責 獣医学博士 佐伯英治)