
エキノコックス症は、キタキツネや犬が多包条虫とよばれる寄生虫に感染し、糞便と一緒に排泄された虫卵が、何らかの拍子に人の体内に侵入し、重い肝機能障害を起こす病気です。潜伏期間は5~15年で、発症すると病巣を完全に切除する以外に有効な治療法はありません。
日本では北海道だけに存在すると考えられてきましたが、2005年には埼玉県で捕獲された犬の糞便から虫卵が確認されました。このように本州で感染犬が見つかるケースでは、転居などで人と一緒に北海道から移動してきた可能性が高いと考えられています。
エキノコックス症をはじめ、ズーノーシス(人獣共通感染症)の伝播には、人の移動が深く関っており、「北海道から本州へ移動したり、海外から輸入するイヌには、駆虫薬投与を義務づけるべき」との意見もいわれています。

多包条虫(Echinococcus multilocularis)
イヌ科の動物が終宿主ですが、中間宿主となる人の体内で嚢胞(のうほう)をつくり、次々に全身の臓器に転移します。
犬はほとんどの場合、感染していても症状が現れない「不顕性感染」です。感染した野ネズミを食べたり、口にくわえたり、感染したキタキツネの糞便と接することで虫卵が体内に侵入し、感染します。感染した犬は、糞便中にたくさんの虫卵を排泄します。
イヌ科の動物から、次の感染源となる虫卵が排泄されます。
ペットでは主に犬、野生動物ではキツネが問題になっています。
エキノコックスが寄生し組織が壊死した人の肝臓感染しても、5~10年は無症状で自覚症状はありません。その後、嚢胞が大きくなるにつれて、肝臓内の胆管や血管が塞がれ、肝機能障害が進みます。
末期には重度の肝機能不全となり、発育中の嚢胞の一部が破れ、多包条虫が血流に乗って肺や脳、骨髄など、さまざまな臓器に転移します。
放置すると90%以上が死亡します。
感染したキツネや犬は、糞便の中に多量の虫卵を排泄します。これが中間宿主である野ネズミを経由して、キツネやペットの犬に移り、その糞便中の虫卵から人に感染します。感染地域で有機農法により収穫された野菜を生で食べることも、虫卵摂取の危険性があると言われています。
(人と同じ中間宿主であるため、ネズミから人への感染はありません)