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獣医療関係者の方へ

獣医療関係者向け情報ズーノーシス&定期駆虫の啓発をサポートする各種専門情報をご紹介。

猫ひっかき病(バルトネラ症)

猫ひっかき病は、その名のとおり猫や犬に人が咬まれたり、引っかかれて感染するズーノーシスです。バルトネラ菌を持ったノミの吸血によって犬や猫に感染・伝播し、その犬や猫により引っかき傷や咬み傷から人に感染します。バルトネラ菌は猫や犬では常在菌ですので無症状ですが、人では傷口の化膿、発熱やリンパ節の腫脹を引き起こします。猫ひっかき病は、ノミが発生・増殖する7月から12月にかけての発生が多く(特に寒くなって猫と一緒にいる時間が増える秋口から冬にかけての感染が多いといいます)、地域的には都市部や西日本が多いという報告もあります。

病原体

バルトネラ菌日本大学 生物資源科学部 獣医学科
丸山総一先生提供

バルトネラ菌(Bartonella henselae

犬・猫へ感染した場合

症状

バルトネラ菌は感染した猫や犬の赤血球の表面で増殖しますが、特別な症状は示しません。

治療法

保菌状態でも無症状であるため、治療対象になりません。

予防法

ノミの定期的な駆虫・予防によって、動物間における病原体の循環サイクルを断ち切る。

人へ感染した場合

通常はバルトネラ菌が不顕性感染した猫や犬から人に感染しますが、菌を保有するノミから直接感染したと疑われる症例もあります。また、人が菌を媒介して他の人へ感染させた例も報告されています。これは猫とスキンシップを取った幼児が、そのままの手で別の幼児を触ったことが原因と考えられています。

症状
左脇窩リンパ節の腫大左脇窩リンパ節の腫大
吉田 博 先生提供

数日から2週間ほどの潜伏期間の後、受傷した部分の丘疹や膿疱、発熱、疼痛や数週間から数ヶ月続くリンパ節の腫脹があります。また、リンパ節腫脹の1~3週間後に、突然の痙攣発作や意識障害で脳症を併発することもあります(発症した人のうちの約0.25%)。

感染経路
[経皮感染]

感染した猫や犬による咬傷やひっかき傷からバルトネラ菌が体内に侵入し感染します。感染ノミの刺咬による伝播も否定できません。

病原体を媒介する動物
ノミ(主にネコノミ)

猫と猫の間、猫と犬の間を媒介するのはノミです。

治療法
  • 軽症の場合は自然治癒することが多い。
  • リンパ節の腫大、疼痛が明らかな場合は、抗菌薬を投与する。しかし、各種の抗菌薬による明確な治療効果は認められない。
予防法
  • 猫や犬の保菌状況は不明なので、飼育しているペットの検査までする必要はないが、猫や犬の爪は常に短く切り、猫や犬を過剰に興奮させ、ひっかかれたり咬まれたりしないようにする。
  • ノミの定期的な駆除・予防を行う。
  • 感染が考えられる場合は、猫や犬との接触状況を医師に伝える。
(文責 獣医学博士 佐伯英治)