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バベシア症

バベシア症とは、バベシア属原虫が犬の赤血球に寄生することにより生じる溶血性貧血が原因となり、いろいろな症状が引き起こされ、治療が遅れると死に至ります。病原体であるバベシア原虫はマダニの体内に潜んでいて、マダニの吸血とともに他の犬に感染します。日本国内では病原性の比較的弱いバベシア症が関西以西の西日本・四国・九州・沖縄地方に多く発生していますが、近年では東日本以北での犬の感染例も報告されています。

病原体

赤血球に感染したバベシア原虫 B. gibsoni(矢印、大きさ2~3μm)
画像提供:佐伯英治先生
赤血球に感染したバベシア原虫 B. canis canis(矢印、大きさ4~5μm)

バベシア属原虫(Babesia gibsoniB. canis canisB. canis rossiB. canis vogeli
日本にはB. gibsoniが分布しており、沖縄県などで散発的にB. canis canisも確認されています。

※世界的には、南アフリカでB. canis rossi、ヨーロッパ、アフリカ北部およびアジアでB. canis canis、熱帯・亜熱帯地域でB. canis vogeli、アフリカ、アジア、アメリカ、南ヨーロッパおよび中東でB. gibsoniが見られます。

病原体を媒介する動物

フタトゲチマダニ

B. gibsoniを媒介するマダニ(フタトゲチマダニ、ツリガネチマダニ、クリイロコイタマダニ、ヤマトダニ)

※写真はフタトゲチマダニの未吸血成ダニ

犬へ感染した場合

症状

B.gibsoniの感染では、発熱、粘膜蒼白、脾腫、ビリルビン尿(茶色い尿)などの症状がみられます。一般的には、バベシアに感染してから2~3週間で症状が現れます。重症の場合は、重度の貧血、黄疸、および多臓器不全が起こり、手当てが遅れて死に至る場合もあります。

治療法

現在のところ特効薬がなく、薬による完治が難しい病気です。症状が治まってもバベシア虫体が体内に潜んでいることもあり、何らかの原因で再発が見られる症例も多く知られています。

予防法

犬同士のケンカによる創傷感染(傷口からの感染)の可能性を除くと、マダニ駆除効果の高い動物用医薬品を使うなどしてマダニの吸血を避けることが、最も現実的な予防法です。お住まいの地域でのバベシア症発生状況や予防対策期間などについて、かかりつけの動物病院に聞くようにしましょう。

人へ感染する可能性

犬に感染するバベシア種は、人に感染性を示しません。ただし、他の動物に感染するバベシア種が人に感染した例があり、その場合は発熱や頭痛、筋肉痛、貧血が認められます。バベシア症は輸血を介して感染する危険性もあるため、日本赤十字社ではバベシア症の既往歴がある方の献血を禁止にしています。

(文責 獣医学博士 佐伯英治)